2.アーユルヴェーダ/ハチミツについての用語と記述


アーユルヴェーダの記述1.

Madhu(マドゥ)【ハチミツ】についての記述

アーユルヴェーダは、「チャラカ・サンヒター」「スシュルタ・サンヒター」「アシュタンガ・フリダヤ・サンヒター」と、主に3つの原書があり、3大医書(ブリハット・トライー)と呼ばれています。
この原書はサンスクリット語で書かれていて、韻文形式かつ詩情的で比喩も多く、重複して記述されている部分もあります。
現代の化学書や医学書のようにマニュアル化されてないため、関連する部分を慎重に引用していく必要があり、代替医療としてのアーユルヴェーダの治療を求めるのであれば、大学でアーユルヴェーダを専攻した医師によるものとなります。


ちなみにサンスクリット語でハチミツは、Madhu(マドゥ)と呼ばれ、主な記述はチャラカ・サンヒターとスシュルタ・サンヒターにあります。


ハチミツの性質や効能
代表的なものはスシュルタ・サンヒターに記述があり、次のように書かれています。

ハチミツの性質や効能
代表的なものはスシュルタ・サンヒターに記述があり、次のように書かれています。

「蜜群」 スシュルタ・サンヒター総論45章より

 

蜜は甘く、渋みの後味を残し、乾性、冷性、健胃的、美形的、強壮的、軽くして和、美味、溶解性(Lekhanam)でまた発酵性(Sandha-nam)である。潰瘍および眼に対し、浄化作用ならびに治癒作用があり、強精性、収飲性で、体内すべての極小の通路、毛細管にまで浸透する。
脂肪を減じ、ヴァータ・ピッタおよびカパの失調を静め、シャックリ、糖尿、呼吸困難、咳、赤痢、嘔吐およびに渇に治効がある。
駆虫性、抗毒性、和軟であって、ドーシャの失調を抑える。それは軽いため、ヴァータ・カパの失調を抑え、その粘性と甘、渋の味によって、ヴァータおよびピッタの失調に対抗するのである。


ハチミツの分類と種類

 

ハチミツの分類
ハチミツの経年変化により性質が変わる状態ごとに分類しています。
Jayanand Madhuは、この分類ごとに分けて採蜜・瓶詰めしています。(アーママドウを除く)

Ⅰナヴィン・マドウ 建設的、強精的で、緩下剤として働き、僅かながらヴァータ・カパの失調を抑える。
Ⅱプラーナ・マドゥ 渋味があり、溶解性で、脂肪および肥満を減少する。
Ⅲパクワ・マドウ トリドーシャの失調を抑える傾向がある。
Ⅳアーマ・マドゥ トリドーシャを激動する傾きを持つ。

ハチミツの種類
ミツバチとその他のハチが集めるハチミツごとに種類が分けられています。


チャラカ・サンヒターには4種類のハチミツの記述があります。

1.パウテッカ 2.バラーマラ 3.クシャウドラ 4.マークシカ

 

スシュルタ・サンヒターには8種類のハチミツの記述があります。
1.パウテッカ 2.バラーマラ 3.クシャウドラ 4.マークシカ 5.チャットラ 6.アーリギャ 7.アウダーラカ 8.ダーラ

パウティッカ 非常に大きなミツバチによって、有毒な花からも花蜜を集めます。それは、【vata】を増やし、痛風や胸の灼熱感を引き起こします。また、鎮静作用があり、脂肪が減少します。
バラーマラ 大型のミツバチによって集蜜され、蜜は粘性です。
クシャウドラ 中型のミツバチによって集蜜され、軽性、冷性で【kapha】を溶解します。
マークシカ 小型のミツバチによって集蜜され、極めて軽性、乾性です。【vata-kapha】の疾患、【kapha】の疾患に有用です。
チャットラ 重性、冷性です。痛風と白斑【shwitra】に効果があります。
アーリギャ 目によいが、関節炎を引き起こします。
アウダーラカ 皮膚病に有用で、喉(声)の調整に効果があります。
ダーラ 乾性で、嘔吐を抑えます。

上記の8種類のハチミツの中で、マークシカが最も効能に優れたハチミツで、マクシカー種のハチが集めたハチミツと記述されています。


この8種類のハチミツのうち、ハチの種類は7種です。

ダーラのみが、ハチの種類の記述がなく樹液などから採取することから甘露蜜を示していると思われます。


ミツバチ以外のハチは蜜を貯めることはほとんどありません。スシュルタ・サンヒターに7種類のハチの記述がありますが、インドには5種類のミツバチ(野生)しか生息していません。そのため、ミツバチ以外のハチ(スズメバチ、ハナバチ、ハリナシバチ、アシナガバチ等)の蜜も採取していたのかもしれません。(極わずかな量と思われます。)
ちなみにチャットラの記述にある特徴的な巣の形は、ミツバチの種では確認されてなく、スズメバチによるものと思われます。


しかし、原文の記述にあるハチの特徴は断片的で、アーユルヴェーダの研究者の論文等も参考にしながら調べていますが、はっきりとは分かりません。
これまで調査した中で、マクシカー種はインドミツバチ(トウヨウミツバチの亜種)の可能性が高いと思われますが、コミツバチである可能性もあります。
クシャウドラはコミツバチ。チャットラはスズメバチ、バラーマラはオオミツバチと思われますが、カリバチの説もあります。
アーリギャはハリナシバチ、アウラーダカはクロコミツバチと思われます。
毒の花からも花蜜を集めると原文に記述のあるパウティッカについては、[大型のハチ]や[ブヨに似た小型の黒いハチ]と相反する論説があります。この毒の花の花蜜が確認されているのがシッキム地方との情報もあり、[大型のハチ]の場合はヒマラヤオオミツバチかもしれません。


マクシカー種はインドミツバチ(トウヨウミツバチ亜種)と思われ、ニホンミツバチ(トウヨウミツバチ亜種)ととても近い種類です。ニホンミツバチはいろいろな花からまんべんなく蜜を集めるのに対して、セイヨウミツバチは最も多く蜜が採れる花から集蜜する性質があります。
セイヨウミツバチはニホンミツバチの数倍も集蜜力も高く、そのためアカシア蜜、レンゲ蜜、クローバー蜜など流蜜の多い花の種類ごとに蜜を採ることができるのです。(単花蜜と呼ばれています)
セイヨウミツバチも補助蜜源を多く用意することで、主力の蜜源の花期以外は多様な花々から蜜を集めます。