2.アーユルヴェーダ/ハチミツについての用語と記述


アーユルヴェーダの記述2.

ハチミツの治療効果

アーユルヴェーダではハチミツの効能・効果を古典の記述や、科学的根拠に基づき、次のように伝えています。 (引用:Dr.krishna R.S.)


ハチミツに含まれる糖分は、消化器系に吸収されやすく、ただちにエネルギー源となります。 

吸湿性があるため治癒効果が早く、治癒組織の乾燥を防ぎます。

鎮静剤の効果があり、夜尿症障害に効果があります。
抗酸化作用があるため、皮膚の損傷を復元し、アンチエイジングに効果があります。
ハチミツの酸性と酵素により生成された過酸化水素により、抗菌効果があります。
ハチミツを常用することで、細菌やウィルス性と戦う白血球を強くします。
ハチミツは、目と視力(回復・維持)にとても有効です。
ハチミツは、喉の渇きを癒します。
カパを抑えます。
しゃっくりを治めます。
尿路疾患、駆虫、気管支喘息、咳、下痢と吐き気または嘔吐に効果があります。
新鮮なハチミツは、体重を増加させ、穏やかな下剤となります。
時を経て保存されたハチミツは、カパを抑え脂肪の代謝に効果があります。

それと、アーユルベーダではハチミツについてもう一つの特別な性質を説明しています。

ヨーガヴァーヒ 【Yogavahi】
他の物の効能を体内の隅々まで運ぶ特殊な機能
「体内の最も深い組織まで浸透する特性があります。ハチミツは、他のハーブ(薬)と併用することで、ハーブ(薬)の薬効を高め、体内の隅々まで行きわたらせます。」

アーユルヴェーダの薬局や漢方などでも、ハーブ(薬)とハチミツを一緒に服用を薦めるようで、薬局でもハチミツを販売しているそうです。


ハチミツの注意事項

ハチミツはアーユルヴェーダで有益な食べものとされていますが、気をつけなければいけないことがあります。チャラカ・サンヒター、スシュルタ・サンヒター、アシュタンガ・フリダヤ・サンヒターの中にも何度も繰り返し記述されているのが、ハチミツの加熱についてです。

そのため、アーユルヴェーダではハチミツは非加熱のものを選び、使用するときも熱を加えることはしません。 具体的な記述は次の通りです。


ハチミツは、熱い食品と混ぜ合わせてはいけません。

ハチミツは、加熱してはいけません。
ハチミツは、温度の高い環境で作業している時に食べてはいけません。
ハチミツは、雨水、熱い食物、香辛料の効いた食物、ウイスキー、ラム、ブランデーのような発酵飲料や、ギーやマスタードと決して混ぜ合わせてはいけません。
ハチミツは、多種類の花の蜜を含みます。そのいくつかには有毒である場合があります。
毒には、「熱」または【ushna】(刺激性)の性質があります。ハチミツが熱くて香辛料の効いた食品と混ぜ合わせると、毒性は増大し、ドーシャのアンバランスを引き起こします。
蜂蜜はいろいろな花の甘露を含みます。そして、その幾つかは有毒である場合があります。毒には、熱いまたはushna性質があります。蜂蜜が辛くて香辛料のきいた食品を混ぜ合わせられるとき、有毒な特性は強化されて、ドーシャのアンバランスを引き起こします。

以上のように、アーユルヴェーダには、「ハチミツは加熱してはいけない。または身体が熱を帯びている状態で食してはいけない。」とされ、古典には加熱されたハチミツを摂ることで重篤な健康被害や死に至るといった記述もあります。


しかし、その一方ユナニ医学(エジプトの伝統医学)では、ボイルしたハチミツを使っています。
また、古くからパンを作る際の酵母をハチミツから作り、パンの生地にもハチミツを練りこんだりと、インド以外ではハチミツの加熱は一般的にありますが、これらを原因とする健康被害は報告されていないそうです。
ちなみに、アーユルヴェーダの研究機関においても、現在はハチミツを加熱することで古典に記述のあるような「死を招く」ような深刻な健康被害が確認されていないそうです。


アーユルヴェーダの8種類のハチミツの記述の中に有毒とあるものが、パウティッカ種のハチミツです。もしかすると、古くはパウティッカ種のハチミツやその他のハチミツが混合されて流通していたのかもしれません。
また、パウティッカ種のハチが集蜜する毒花は、限定された地域のもので、現在既に無いのか、その地域では養蜂をおこなっていない可能性も考えられるでしょう。

 

だからといって、アーユルヴェーダが誤りとは言い切れません。アーユルヴェーダにおいてハチミツを加熱してはいけない理由に有毒な花蜜と蜂毒があげられています。

日本にもトリカブトやツツジ科の花蜜に毒が含まれますし、それらの花から得られたハチミツによる健康被害の報告もあります。
トリカブトの毒は加熱することで無毒になるそうですが、世界中の有毒の花が持つ毒の種類は数百とあり、加熱することでさらに毒性が増す有毒な花蜜があるかもしれません。


また、蜂毒も研究されているのは主に西洋ミツバチのもので、アーユルヴェーダにある7種のハチ毒についてはまだまだ研究段階のようです。それらについても今後の研究で新しい発見があるかもしれません。


最近は、ハチミツを加熱することでAGEs(糖化最終化合物)が生成され、このAGEsが糖尿病性血管合併症、動脈硬化を発症しやすくなることが分かっています。
非加熱のままなら造血や血管強化の作用があるのに、わざわざ加熱して健康リスクを高めるAGEsを増やすのもナンセンスのように思います。

 

ハチミツを生のままなら、熱に弱いビタミンCや酵素が有効に働きますが加熱してしまうと失ってしまいます。ビタミンCや酵素は「ハチミツ成分とエビデンス」にあるように、わたしたちの健康にとってさまざまな役割を与えてくれます。


ハチミツは人工的には作れない自然からの恵みです。

スプーン一杯の中に凝縮された成分を余すことなく受けとるには、やはり、加熱しないでいただく方が好ましいといえるでしょう。