建築家から養蜂家に


「住環境だけが全てではない」と、自分たちの食も見直し始めた。農薬、添加物、エネルギーの低い野菜…この世の中は一体どうしてしまったのだろう。しばらくして、夫婦は剛弥さんの生まれ育った北海道へ居を移した。しかし、場所が変わっても働き詰めの習慣が抜けず、間もなく彼は甲状腺を患ってしまう。「騙し騙しやってたんだけどね、手が震えて図面がかけなくなってしまってね」医師のすすめで、薬を服用し治療を試みた。大量の放射線を発する薬を飲み甲状腺を焼き切る放射線治療も受けた。「数値上は良くなっているはずなのに、体と頭と心がバラバラ。自分じゃないようでもの凄く苦しかった」このままではいけない。食べものはもちろんのこと、代替医療にヨガや瞑想、生活スタイルを根本から見直し、体にいいと言われることはとにかく試し模索していた。

ちょうどその頃「農的暮らしのレッスン」という土に近い暮らし方を学ぶ講座に一緒に参加していた仲間たちと「蜂を飼ってみないか?」という話が持ち上がった。建材として蜜蝋を求めた彼は、これに前のめりに取り組みはじめる。一方、夫の病を治癒する方法はないかと妻・優子さんは仕事の傍ら独自にハーブの勉強を重ねていた。そんな2つの道が一つになるかの如く、2人はアーユルヴェーダの古典書の中から「体調を整える効能別ハーブハチミツ」という概念に出逢うこととなる。必然とも言うべき、これらの好機が彼らをフィトテラピー(植物療法)と非加熱ハチミツという方向へと導いていった。自分たちの手で育て研究を重ねたハチミツは、彼の体をみるみるうちに蘇らせた。